こんにちは、エンジニアのオオバです。

追記 : Live2D Euclidは2018.10.16に残念ながら公開停止されました

2017年4月26日にリリースされたLive2D Live2D Euclidをいち早く触って、フォーラムなどでのやり取りを経た今の感想を綴っておきます。

あくまでUnityを使ったスマホゲーム開発視点での感想です。

結論

Live2D Euclidを導入するにはまだ早すぎるので、アップデートを待って今後の行く末を見届けてからが良いです。

この結果に至るまでのポイントを紹介していきます。

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Live2D Euclidの良い点

原画通りのキャラを3Dで作り出すことが出来ること

【公開停止】早過ぎたんだ!!!...Live2D Euclid_0

この子はサンプルの風花ちゃん(以下:風花)。非常に可愛く仕上がっていて、モデルを360度どこから見ても破綻が無く表示されました。
Euclidの看板娘なだけに色んな表情がつけれるようになっており、それらを触るだけでも面白いです。

原画通りに作ることが出来るということは、そのキャラを描いた作家さんがEuclid化した時にアートディレクションをし易いというメリットがあります。

Live2D Euclidの8つの悪い点

1.複数体表示するのが描画順的に難しい

【公開停止】早過ぎたんだ!!!...Live2D Euclid_1

複数体出すと頭部の描画順が狂います。
そもそも複数体を表示させることを想定されていません(解決するAPIが存在しない)。
※自力でシェーダーをなんとかすれば解決できそうではあるが、隠蔽されている部分の副作用が怖い

2.身体は3Dモデルを必要とする

Euclidなのは頭部だけで、身体はMaya等の3Dソフトを使って制作しなければならず、1技術で完結するものではありません。イラストレーターが自分で絵を描いて3D化する場合、顔まではEuclidで可能ですが、身体は別の技術を習得しなければいけません。

【公開停止】早過ぎたんだ!!!...Live2D Euclid_2

また原画とテイストを合わせるために、身体用のシェーダーを独自に作らないといけなくなるため、ある程度の3D技術は必要です。

3.習得難易度がハードモード

ぼくも実際にEditorを触ってみましたが、非常に作りづらいです。というより、取っ掛かりが見つかりません。

この2ヶ月の間に公式のチュートリアルが追加されています。

また未だやってみた系の動画あまり見つかりません。以下の2つくらい。制作難易度の高さを物語っている気がしています。

もっと粘土をこねるくらいのライトな感覚で作れれば良いのですが。ニッチな技術なだけに、ここに時間投資して良いものか悩むところです。

4.負荷が高過ぎる

【公開停止】早過ぎたんだ!!!...Live2D Euclid_3

ぼくの検証では、風花1体表示しているだけの状態で、iPhone5sでは常時60fpsを切り、大体45fpsを推移します。

GPUには余裕がありますが、CPU負荷でフレームレートが落ちるようです。iPhone6sでも時々60fpsを切ります。

【公開停止】早過ぎたんだ!!!...Live2D Euclid_4

結論スマホ利用は厳しいという感覚です。

ちなみに、天使の輪、グラデーション、動的チークなどメッシュでクリッピングしないといけないものが増えるとオブジェクトが爆発的に増え、負荷が上がるようです。この辺を注意すれば負荷を抑えられそうですが、その制限下でどこまで表現できるかが疑問です。原画レベルで厳し目のレギュレーションを作る必要がありそうです。

5.長い髪キャラは不可

【公開停止】早過ぎたんだ!!!...Live2D Euclid_5

カメラの位置によって各パーツのメッシュが回転、拡縮することでEuclidは絵を作ります。この基本設計により、長い髪が身体まで達してしまうと、カメラの角度によって髪が身体にめり込んだり、隠れてしまったりとなるでしょう。 そもそも現状髪に当たり判定機能は存在しないので、身体と触れた時点でめり込みます。
現状は短髪限定になりそうで、キャラゲーとしては致命的です。

※どうしても長髪を使いたい場合は、指定した髪の束が、体の前または後ろに必ず来るというような処理を入れれば実現できる気がします。

6.顔周りの厳密な当たり判定が設計的に不可能

5.と説明が被りますが、Euclidはカメラの位置によって擬似的にビルボードを3Dらしく表現しているだけですので、各パーツが3D座標上に正しく存在しません。
これにより、顔を手で触る、顔周りにオブジェクトを配置するということが難しくなります。
ある方向から見た時は問題ないけど、ある方向から見たら顔にめり込んでいるということが起こるでしょう。

7.サブスクリプション型のハードル

90日間のトライアルはありますが、3ヵ月過ぎれば、年間契約で1580円/月払っていく必要があります(個人開発の場合)。フリーウェアではない時点でEuclidクリエーターが増える予感がしません。増えなければ、キャラを大量生産できないためEuclidを採用するという判断は下しづらいです。それでなくてもニッチな技術なので、サブスクリプション型はいかがなものなのでしょうか。

8.Euclidの優位性が見つからない

まとめに近いですが、

これらのポイントにより、セルルック3Dモデルと比べてEuclidの優位性を見つけることが出来ません。

まとめ

かなりフォローになってしまいますが、Live2D Euclidは技術的なアプローチは面白いと思います。よくこの方法を思いついたなと。

という条件の元で実験的なコンテンツを作るというのはありかもしれません。
何はともあれ今後のアップデートに期待です。

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